はじめにこの記事を読んだときには「なるほど」という感じで読み終えて、特に何もしなかった。共感する部分もあるし、あたらしい発見もあるし、総合して「なるほど」と思っただけ。
一晩経ったら評判がさらに拡大していたので、今度はツイッターやはてブや増田に寄せられた感想を読み、今度は「まじか……」と思っているところ。著者が呼びかけるいろんな「ふつう」が集まるのではなく、よく似た「ふつう」が殺到していて、それになんだかゾッとした。
たとえば、「余暇は楽しく過ごさなければいけない」とか「24/7を充実した時間にしなければいけない」とか、そういうポピュラーな価値観がある。本当は、無意味で非生産的であってもいいはずなのに、私たちの時間に対する感覚はいまやすっかりマーケティングされきってしまっていて、それを許してくれない。
どこで読んだのか忘れてしまったが、インドネシアかどっかの東南アジアから日本を訪れた若者がこんなことを言っていた。「日本は生きるのが大変だ。どこを歩いても、なにを見ても、欲しい気持ちにさせられてしまう。母国ではそんなことに苦しまず、もっと楽に生きていた」と。
これを同じことが人生にも言える。成長し、上昇しなければいけないという価値観に過剰に支配されすぎている。そう感じる。少なくとも、「あるがままでいい」と思っている人はこうした言葉のゲームに参加してこないので、ネットを漂って調べる限りにおいては、過剰に支配されているように見えてゾッとしてしまう。
でも、無意味でいいし、非生産的でいいし、あるがままでいい。そういう「ふつう」のことを一言書いておきたかった。
追記 2021/12/10
その後、2021年になって、マイケル・サンデルの『実力も運のうち』やジョニー・オデルの『何もしない』が日本でも刊行されて話題になった。このような考え方が次第に普及していっていることを感じる。
追加 2023/5/11
NewsPicksの井上さんが「a scope」ゲストに登場。成長しなければいけないという価値観への抵抗がどのように語られていくか楽しみ。
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