珍しく、ポッドキャストでも日乗でもないニュースレターを発行します。
本日、2025年5月30日に、短編小説「湖の底で戦争が始まる」の初稿を書き終えました。
完成させるにはこれから何度も推敲をしないといけないわけですが、料理はもうできている状態なので、「やっぱりお出しできなかった」なんてことにはなりません。今秋出版予定のアンソロジー『湖の底で戦争が始まる』(譚験叢書)に表題作として収録予定ですので、ぜひ楽しみにお待ちいただければ幸いです。
ちなみに、表紙の案はこのようになっています。
なお、この本には私の他にも多くの著者がいて、私の小説は部分に過ぎません。小説のための「あとがき」や「解説」を用意するスペースもありません。でも、記憶が風化しないうちに、書き終えたこの瞬間に私の頭のなかにあることをメモっておきたい。そういう気持ちでこれを書いています。
以下、メモランダムです。
記録を振り返ると、この作品を最初に構想したのは2018年9月18日。書き終えるまでに、なんと7年近くかかったことにあります。
ノートの一部を振り返ります。
2019年7月31日。主な登場人物として、主人公(訳があって伏せます)、藤原澪(ふじわらみお)、伊能犬親(いのういぬちか)、松平芙美子(まつだいらふみこ)の名前が登場します。しかし最終的に、今作には伊能犬親は登場しないことになりました。
また、書き終わるまで繰り返し登場するモチーフとなった「こんなところで、こんなことをするはずじゃなかった」という言葉が、このときすでに書いてありました。
2019年12月22日。藤原澪のビジュアルにぴったりだと感じた写真の切り抜きがノートにありました。いつかイラスト化する可能性があれば、利用します。
その後しばらく、1919年からはじまる20世紀前半の出来事を調べる時期が続きます。登場人物のひとり、松平芙美子さんの生年が1919年だからです。
2020年3月20日。松平芙美子さんを「プレッパー」として描くことに決めます。プレッパーとはいわゆる終末論者ですが、1919年生まれの芙美子さんには、もうちょっと年季のはいったプレッパーになってもらうことにしました。
2021年1月3日。湖の底という地理的なイメージと、神話的な時間を重ねる試みであることをあらためて大書してありました。
2023年。この頃から『遠野戦記』という時代小説を書くようになり、「湖の底で戦争が始まる」のほうは完全にストップします。
2025年5月7日。アンソロジーを年内に出版するためにお尻に火がついて執筆を開始。マントラを唱えながら、毎朝8時から60分か90分書きました。
2025年5月30日。初稿を書き上げる。23,755文字。今感じていることは「もっと切れ味のよいラストシーンがあるのでは」ということ。おそらく、直せば直るでしょう。
書き終わった高揚感から、今作を書くにあたって霊感を授かった本を手元から集めて写真を撮りました。関連がある本もあれば、一緒に並ぶことがありえない本もある。うまく成功するかわからないけど、少なくとも、自分が書かなければ決してこの世には存在しなかった個性のある作品になったと思います。書き上げられてうれしい。
このあとは、引き続き毎朝推敲します。しばらく楽しい時間が続きます。早くお届けできますように。