Photo by Tara Winstead from Pexels
昨年から、スマートニュースも新卒採用をはじめた。今年になってからは、21年入社が決まった学生のうち何人かが内定者アルバイトとして早くも出入りし始め、組織に新しいムードを持ち込んでくれていて素晴らしいなと思っているところ。それについて同僚からこんなことを言われた。
「新卒の子たち、すごくいいですね」
そう、すごくいい。でも、何がいいのか?
私は、ライブドアのときとLINEのときと今回と、未経験一括採用(≒ 新卒採用)をゼロイチではじめる瞬間に立ち会ったきた。その経験から、新卒に求める人物像について自分なりの考えがまとまってきたところ。今日はそれについて書いてみる。
プロフェッショナルやスペシャリストを中途採用することによって組織が作られているベンチャー企業にとって、未経験の新卒人材に期待するのは「未来の幹部候補」に他ならない。幹部というのは、複数の専門性を持つことで複数の領域を担当することができ、それによって部門間のコンフリクトを解消するのみならず、それを統合し、ケミストリーを起こして、足し算ではなく掛け算のような高いレベルの成果を導く人のことである。具体的には、ひとりの人がプロダクトと法務をみたり、エンジニアリングと人事と営業をみたり、といったことが可能な人材のことで、しかも、単なる兼務を超えた統合的な結果を出すことが期待される。選考を通じて探しているのは、将来のそういう可能性を感じさせるタレントである。
現時点では若く未経験な学生のなかから、どうやってそのタレントを見つけるのかというと、ポイントは「複数の専門性を獲得できるかどうか」にある。そのために必要な能力には、1) グロース・マインドセット、2) 好奇心、3) 学習能力、4) 学習習慣、5) アイデアと行動の統合などがあり、それらが示す特徴には、以下のようなものがある。
新しい環境に飛び込んだときに一時的なポジションの低下があってもゆらがない基本的な自己肯定感を持っている(グロース・マインドセット)
リスクをとって未知の領域に飛び込んだ経験があり、失敗の総量が多い(好奇心)
同世代の誰よりも詳しい、という専門分野をすでにひとつ以上持っている(学習能力)
自分の時間の構造化を行って、計画に沿って自己を律した経験がある(学習習慣)
自分で何かを実際に創作し、それを友人以外の人に売り込んだ経験がある(アイデアと行動の統合)
こうした特徴を示し、こうした能力を有する人に、複数の専門性を獲得していける将来性を感じる。
では、こういうタレントが端的にどう見えどう表現されるかと言うと、「素直でいいやつ」ということになる。単純なようでいて、実はそれが大事で、冒頭で紹介した同僚の「すごくいいですね」というのも、何気なく芯を食った表現だったりする。
と、こういう話をしながらその同僚と盛り上がったのは、その意味ではスティーブ・ジョブズよりビル・ゲイツのほうが尊敬できるよね、というようなことだった。そのこころは、復讐に熱く燃えるビジョナリーより、穏やかな人柄でライフステージごとに専門性を増やしてく学習者であるべしということ。ジョブズはひとりで十分だが、ゲイツなんてなんぼあってもいいですからね。新卒に求めるのはそういう性質のものである。
2020年7月28日