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まだよく知られていないSubstackの真価 週刊メディアヌップ#13
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まだよく知られていないSubstackの真価 週刊メディアヌップ#13

メンバーのデータベースを惜しみなく提供していてすごい。

sasakill.eth|佐々木大輔
Apr 19, 2022
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まだよく知られていないSubstackの真価 週刊メディアヌップ#13
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ささきる(@sasakill)が気になったニュースにコメントを添えて、1週間分まとめてお送りします。

ポッドキャストの新シリーズ「UGC民俗学」を配信中、そして、先々のエピソードを編集中です。みんないいこと言ってくれるんだよなあ。どうぞお楽しみに。


今週のナイン・ストーリーズ

2022年4月13日〜2022年4月19日

1. Podcasting, but better

この記事は、Substackが今後ポッドキャストの機能を強化することをお知らせしたものです。

気づいている人はまだ少ないようなのですが、Substackの真価はニュースレター配信機能ではありません。メンバーのデータベースです。プラットフォーム側が独占するのがあたり前だったこの機能をユーザー側に提供していることこそがSubstackのおもしろさです。それに思い至ると、このポッドキャスト機能が存外に強力なツールになることに気づきます。Anchorをはじめとするこれまでのポッドキャストが一方的な配信だったのに対して、Substackのそれは対話になり得るからです。

そういえば先日、USのある著名なジャーナリストに話を伺う機会があったのですが、Substackについては悲観的なものの見方をしていました。「メールアドレスがあればコピー出来てしまう単なるニュースレターだよね」という感じです。論調は、NYTの記事にある通り。「Substack’s Growth Spurt Brings Growing Pains」には、ニュースレターの乗り換えの容易さを挙げ、Substackの成長の痛みについて取り上げています。

しかし、私がSubstackの真価だと感じているメンバーのデータベースについては、RevueもGhostもMediumも提供できていません。もちろんtheLetterもnoteも。これでは乗り換えられません。

なぜどこもそれを追随しないのか? おそらくはそれが技術の問題ではなく、プラットフォームとしてもっとも大事なデータをユーザーに渡してしまうという哲学の問題だからなのではないでしょうか。Substackにはそれが自然にできている。

Substackの話が思いのほか長くなってしまったついでにもうひとつ。Media Innovationから「地元メディアをニュースレターで存続可能にできるか? 二人のジャーナリストの挑戦」。「Arizona Agenda」というローカルニュースレターの挑戦の話です。ローカルニュースのあり方に興味を持ち続けているので、継続して追ってみたいと思います。

2. NFT取引の法的分析~「NFT化」「NFTの保有」「NFTの売買」とは法的には何を意味しているのか~

この手の記事はいくつも読みましたが、これまでのところ一番気に入りました。「わかりやすさ」は大抵の場合、省略化や簡略化をともないますが、この記事の場合は、長くなったり冗長になったりするのを厭わずとにかく詳しく正確に書こうとしています。今後、誰かに説明するときにはこれを使おうかと思います。

3. イーロンTwitter買収の意図? TED2022でのイーロン・マスク 電撃インタビュー by TED クリスアンダーソン

今週はとにかくイーロン・マスクのニュースをよく耳にします。事の経緯は専門媒体に委ねて、メディアヌップではものづくり的な観点でしびれる一言を抜書きします。

私は、今、地球上で生きている誰よりも、ものづくりについて知っていると思います。愛しい人よ、教えてあげよう。あの車のすべての部品パーツがどのように作られているのか

たぶん本当なんでしょう。経営者が自社プロダクトの詳細についてこれだけの自信を持っているということがかっこいいなと。

4. ゲームを主催して年収1000万?GameTectorに「あと値決め」が導入。業界初のマネタイズできるeスポーツプラットフォームを始動

ネットプロテクションズ社の「あと値決め」というサービスを、ゲームテクター社の「Game Tector」というeスポーツ大会プラットフォームに導入したというお知らせ。賭博罪を回避しつつ、ゲームマスター(大会主催者)という役割を仕事にする可能性を提示しています。おもしろい。トレーディングカードゲームに応用したり、Web3の考え方を導入してもっと化けさせることはできないものだろうか。

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Yuki Matsumoto / 弁護士 @ym_gamelaw
賭博罪は、偶然の勝敗に関して財物の得喪を争う場合に成立します。 そのため、 ・既に結果が判明している ・参加者/視聴者が参加費用を任意でカンパする スキームであれば、結果に関して財物を賭けているという評価にはなりようがないため、賭博罪は成立しません。
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Yuki Matsumoto / 弁護士 @ym_gamelaw
ゲームを主催して年収1000万?GameTectorに「あと値決め」が導入。業界初のマネタイズできるeスポーツプラットフォームを始動 - PR TIMES|RBB TODAY 天才過ぎて脱帽しました。。。何がすごいか別途記載します。 https://t.co/Z6A0CVv5K9
6:43 AM ∙ Apr 14, 2022
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5. DAO MASTER

DAOのツールのリストやデータベースは調べるとたくさんみつかるのでなにが最良なのかよくわかってませんが、とりあえず今週はこれを見ていました。特に気になったのは「Unlock」。

ジャンルとしては「コミュニティマネジメント」。メディアヌップのDiscordに入れてみようと思って物色しています。

6. 個人の切実さ、そのまま社会学の問い 見田宗介さんを悼む 社会学者・大澤真幸

社会学の巨星、見田宗介さんの訃報。多くの追悼文から、これを引用したいと思います。

美しく無駄のない先生の文章は、ひとつの詩でもあった。詩人の直観と科学者の堅実性。二つの才能をもっている学者は稀(まれ)である。しかも見田先生の場合、二つが融合し、完全に一つになっている。

先生が愛した宮澤賢治に、「学者アラムハラドの見た着物」という未完の作品がある。先生は、「樹(き)の塾」という私塾を主宰されていた時期があるが、それは、楊(やなぎ)の林の中のアラムハラドの塾をイメージしたものだ。あるときアラムハラドは、子供たちに問う。人がしないではいられないことは何か。何人かが答えた後、アラムハラドは最後にセララバアドという子を指名する。「人はほんたうのいゝことが何だかを考へないでゐられないと思ひます」。私は、どんなに力不足でも、見田先生にとってのセララバアドでありたい。先生の死を超えて、先生の問いを受け継ぎたい。

7. 「スティーブ・ジョブズもロックファンなんですよ」『ロッキング・オン』創刊メンバーが語る、ロックとPCの相性

パーソナルコンピューターの歴史の側から資料を追っていくと、音楽や映像といったクリエイティブの分野とコンピューターの分野が合流していくのは当然の流れだったわけですが、それを音楽の側から表現した言葉としておもしろいと思いました。

橘川:ロックって、ある意味「共同体から切り離される痛み」なんですよ。個人になっていく時の痛みをシャウトしたんだよな。その痛みを持った個人をつなげるのが、実はコンピューターだったわけだよ。パソコンってある意味、「第2の自我」なんだよな。

ちなみに、柳田國男が雑誌「民族」でやろうとした読者投稿型のデータベース作りはいまでいうソーシャルメディアだったと喝破したのは大塚英志さんでしたが、ここで橘川さんは、「投稿雑誌としての『ロッキング・オン』の到達点のひとつがTwitterだった」というような発言をしています。なんだか微妙に響き合うところがある話ですね。

8. 高野文子さん 新潟の少女が漫画家になるまで: 日本経済新聞

ご尊顔を初めて拝見しましたが、どこからどう見ても高野文子さんで、本人と作品の一致度の高さにずきゅーんときました。インタビューの内容もおもしろい。そういえば、新潟の友人がいつも帰省のお土産に「小屋で凍らせた菜っ葉の漬物」をもってきてくれたのを思い出しました。絞って刻んでご飯に乗せて食べるだけなんだけど、あれ美味かったなあ。

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ささきる | sasakill.eth @sasakill
新潟の郷土料理・煮菜の話がいい。こういうのがいい。 高野文子さん 新潟の少女が漫画家になるまで: 日本経済新聞
nikkei.com高野文子さん 新潟の少女が漫画家になるまでたかの・ふみこ 1957年新潟県生まれ。作品集に「絶対安全剃刀(かみそり)」「るきさん」「黄色い本」など。2022年のテレビアニメ「平家物語」ではキャラクター原案を手掛け、共著に「わたしたちが描いたアニメーション『平家物語』」。橋本治「桃尻娘」のイラスト原画橋本治さんの小説「桃尻娘」シリーズの文庫版イラストを依頼されたのは、1981年のことだった。79年に短編漫画「絶対安全剃刀」で商業誌デビューしたばかりで、まだ単行本も出していなかった頃だ。文庫の編集者の人が「ポルノ映画にもなったんですよ」と言うので、恐る恐るページをめくると、主人公は当時のわたしと同年代の等身大の女の子だった。初めて橋本さん…
4:29 AM ∙ Apr 18, 2022

9. 画展「雑誌・攻略本・同人誌 ゲームの本」のキーマン3名に聞く,制作の舞台裏。“ゲームの本”を眺めれば,いろんな歴史が見えてくる

小樽で行われている「雑誌・攻略本・同人誌 ゲームの本」の展示の話。いますぐ小樽に旅行に行こうかと思うぐらいの衝動が湧いてきて我ながらびっくりしました。ついこないだポッドキャストの収録のために買った「月刊コンプティーク」の1989年のバックナンバーがあまりにおもしろかったという、その良質な体験のせいかもしれません。いつかどこかで常設展示されてほしい。

あとがき

よいアイデアが浮かんで、課題が出てきて、それを突破するさらによいアイデアが浮かんで、でもまたさらに大きな課題にぶつかる。それを何度も繰り返しながら登っていくと、空気が薄くて見晴らしのよい、しかし自分の他には誰もいないような場所に来られたと思うことがあって、そういうのって楽しいです。まあ、たいてい魔境 * なんですが。

* 魔境(まきょう)とは、禅の修行者が中途半端に能力を覚醒した際に陥りやすい状態で、意識の拡張により自我が肥大し精神バランスを崩した状態のことを指す。

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1 Comment
morichin
Writes 晴耕雨読 - Tiny newsletters from Ky…
Apr 20, 2022

Substack リーダーアプリがシンプルで気に入ってます。ちゃんとバックグラウンドで再生してくれるのでPodcastもSubstackアプリで聴いてます

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