先週はポッドキャストの収録が忙しくニュースレターの発行をスキップすることにしたので、たっぷり二週間分のニュースから選びました。どうぞ。
今週のナイン・ストーリーズ
2022年5月18日〜2022年5月31日
1. NFT の不確実性は高まるも、タイムは1000万ドル以上の利益をあげる:「クリプトネイティブなコミュニティに価値がある」/ DIGIDAY
大手のメディアがNFTを活用している事例として、手法の洗練度としても金額の規模としてもひとつのメルクマールになるものだと思います。今後、誰かに事例を聞かれたら、まずこの例をご紹介することになると思います。
ちなみに、私も思わず2006年のPerson of the Yearである「You」が特集された号の表紙が売っていないか探してしまいましたが、個別の表紙をNFTにして売っているわけではないようです。
2. Showcase Your NFTs on Your Linktree and Build Your Web3 Brand
プロフィールサービスのLinktreeがNFTの表示に対応しました。かつ、トークンゲーティングに対応したプロフィール表示にも対応しています(いまのところEthreumのコントラクトアドレスだけ使えるのを確認しました。Polygonなどは通らなかった)。
メディアヌップのLinktreeに試しに設定してみると、こういう感じに見えます。
すると、やっているそばからWallet Identityというものをすごく意識させられます。たとえば、これら6個のNFTを掲載する意味を文章にするとこのようになります。
Lil Nouns ... DAOに興味あります
Loot ... ゲーム開発に興味あります
NFT Summer Moments ... 投機的な高額PFPは冷めた目で見ています
Nishikigoi NFT ... 地域活性化に興味あります
Generativemask Ukraine Edition ... アート作品の購入でウクライナを支援しました
Wagmi Cats ... 和組の情報にはいつもお世話になっております
Polygonで持っているNFTが(まだ)表示できないのが残念ですが、それを除けば、いまの自分の興味が忠実に反映されているいい感じのプロフィールになりました。これは確かにLinktreeが対応する意味がある機能だと感じました。
3. 株式会社PitPa、番組リスナー向けNFT会員証のアップデートを実施〜ゲーミフィケーションを取り入れ、聴取者のロイヤリティ向上を目指す〜
ポッドキャストを中心としたコミュニティの会員証としてNFTを利用するというアイデアです。
私は送ったお葉書も採用されずDiscordのコミュニティにも入れていないのでこの会員証を手に入れられていないのですが、それゆえに、これがどういうものが気になって継続的にウォッチしております。ちなみに、OpenSeaで調べると5月31日時点の保有者は28人とのこと(参照)。
4. Vitalikの「Soulbound」
イーサリアムの共同創業者ヴィタリックらによる最新のアイデア「Soulbound」について、多くの人が知的な刺激を受けていたようです。熱したり冷えたりで忙しいWeb3の中心に位置しながら、ブームに距離を置いてこのようなアイデアを発し続ける存在は本当に貴重。これを読み解き、解説に挑んでくれたコンテンツのなかからひとつご紹介します。
5. NFTコンテンツでオリジナルグッズの作成と販売ができるようになりました / SUZURI
SUZURIにウォレットを接続して自分が所有しているNFTのグッズを「買える」と考えるのは、行えることとしては間違いではないけれど、この企画の本質ではありません。それを「販売できる」というところがおもしろいわけです。
例えば、CC0を宣言しているNouns(およびLil Nouns)であれば、その所有者である私はそのキャラクターのグッズを制作してそのまま販売することができます。逆に言えば、CC0のように自由な権利を与えていないNFTの場合は、そうしたことはできません(NFTごとに付与されている権利が違うので要確認)。
自分がそのIP(知財)のエージェントとして、流通から販売までが行える。それをSUZURIを通してコンパクトに表現できているのが、非常におもしろいと思いました。
6.「Discord」は男子の半数以上、「TikTok」は女子の半数が利用 大学1年生調査 東京工科大
でしょうね、という感じなのですがもう一言だけ。
Slackが、ビジネスメールの一部をわずか数年のうちに駆逐してしまったように、Discordは、このあとの数年でLINEのようなプライベートメッセンジャーの一部を駆逐してしまうと思います。昨年末の時点ですでに30%が非ゲーム用途で使われているそうなので、そこから先、ネットワーク効果が広がるスピードはあがるばかりだと思います。Discord is eating the worldです。
ちなみにメディアヌップのサーバーはこちらです。Discordでのコミュニケーションを体験してみたい方はぜひどうぞ。https://discord.gg/CNhDFFhqtR
7.【本屋月評】NFTを活用した電子版(NUMABOOKS・内沼晋太郎)
来月にドロップ予定の『僕らのネクロマンシー』のデジタル版の版元である内沼さんのコラム。そのなかに、NFTという新しい技術を使ってデジタル版の制作を試みる理由になる部分が書かれているので引用します。
けれど一方で、私たちが紙の本に求めてきたもののすべてを、電子書籍が叶えているかといえば、必ずしもそうではない。そもそもデジタルデータに過ぎないから触ることもできないし、部屋に飾ることも積むことも、友達に貸すことも借りることも、紙の本のようにはできない。不要になっても、売ることもできない。
ひとことでいえば、いくらバーチャルな本棚に並べられていたとしても、電子書籍は〈私のもの〉だと感じさせてはくれない。実際に、多くの電子書籍サービスにおいては規約上、購入者にあるのは利用権であり、所有権ではない。〈私のもの〉ではないのだ。
NFTの特性をもし十分に生かせたら、これまでとは違う所有感をともなったデジタル版の本がつくれるかもしれない。そんなことを考えてただいま絶賛制作中です。
文章をコレクションする。そのアイデアをあらためて宣言した文章。実にいい。共感します。
これを読んで「ウェブで無料で読めるものをわざわざ買う人なんているの?」と思うかもしれませんが、実際、私がはじめてMirrorを使って文章を書き、Li Jinの文章を購入したとき、「これは成立するな」という感覚をすぐ理解できました。その体験ひとつで、「所有に相応しい文章を書こう」「所有に相応しい文章を探そう」というようにマインドセットが変わります。そうなると、Mirrorで書く文章は、ブログやニュースレターというよりも、論文や小説に向いているという感覚が得られます。もし、そのような意識で文章を書く人がたくさん集まるプラットフォームが存在するのなら。そう考えるとワクワクします。
終始テンション高く会話が進行する対談ですが、ところどころメディア論や文体論が飛び出してきて、硬軟どちらの視点でも楽しめます。しかし聞き手の白鳥士郎さん(@nankagun)が実によく読んでおられる。特にこのあたりの話を引き出してくれたのがうれしかったです。
──『クリスタニア』はロードス島戦記に近くて、1ページ当たりの文字数も抑えめで、文体は三人称ですが視点は主人公のものが多い。ここから初めて水野作品に、そしてラノベというジャンルに触れる子供たちのことを意識していらっしゃるのかな……と。
水野:よく読んでおられる。ただ、文体を変えているというほどの意識はなくて……僕は「リアリティーレベル」と呼んでいるんだけど。
──おっしゃってますね。それこそ、あかほり先生がファンタジーの話題でおっしゃっていた『枷』がそれに当たるのだと思いますが。
水野:そこは意識して書いています。たとえば『ロードス島伝説』という作品は、「僕はここで重厚なファンタジーを書き切るのだ!」という強い意志を持って、自分がそれまで書いたことのないような重厚な文章にチャレンジしてみたんですよ。
で、ある程度成功したという感触もあった。だから伝説のおかげで、自分は小説家になれたかなという印象は持っていて。
メディアヌップではこのあたりのロードス島戦記の話を4話にわたって掘り下げています。未聴の方はあわせてどうぞ。
あとがき
ここまで読んでくださった方にプレゼントのお知らせです。来週、6月7日までの間にメディアヌップへメッセージをくださった方に、To, Nup & FamiliarsのNFTをプレゼントします。お送りするのはサイクル2の使い魔であるRabbitです。数に限りがありますので、応募多数の場合はより長く購読してくださっている方を優先させていただきます。メッセージお待ちしています。
https://forms.gle/L6HbzjZC7QKkMY4F9