ONA22をはさんで2週間ぶりの配信です。私がロサンゼルスという街にあまり馴染めなかったために、真面目にセッションに参加して、昼夜問わず仕事をして、息抜きはポッドキャストの収録という苦しい暮らしをしていました。一ヶ月もいたら小説も書き終えられそうな感じです。
ロサンゼルスにいる間も進捗していた「#GOTL」の情報公開第二弾です。これで全体の情報量の20%くらい? 詳しくはこちらのニュースレターで。
今週のナイン・ストーリーズ
2022年9月21日〜2022年10月4日
伝統芸能と現代のポップカルチャーを混ぜ合わせた最高にクールなイベント。友人・知人たちが企画・演出に関わっていた他、参加者のなかにも友人・知人があり、彼らから素晴らしい写真や動画や感想が流れてくるのを楽しみつつ、そこに参加できなかった悔しさを感じていました。来年があれば、万難を排して行きたい。
クリエイターエコノミーカオスマップなるものが参考になるんだかならないんだかよくわからないのに対して、これは「TikTok」という太陽を中心とした生態系が整理されていて非常に参考になります。
この図の中には、新旧さまざまなサービスが含まれていて、「昔からあるあのサービスは、TikTok天動説においてはこのような衛星軌道にいるのね」というのがわかったりします。
個人的には「collective」という個人のクリエイター向けバックオフィスプラットフォームに興味を持ちました。これを身につけるだけで普通かなり時間がかかりますもんね。
3/ クリエイターのパラドックス:創造的余剰の中の文化的停滞
この問題を私が最初に意識のは2007年。宮台真司の発言です。ニュースレター#28でも取り上げた内容を、再度引いてみたいと思います。
「世界が本当に図書館化して誰でもアクセスできるようになるということは、歴史が終わるということだと思う。というのは、すべてが既知性のなかに入り込んでしまうということ。既知性というのは、入れ替え可能と同じことだよね。そういう意味で言えば、ITの進歩というのは、歴史の終わり、主体の終わり、表現の終わり、あるいは、古い意味でのコミュニケーションの終わりを意味している。
この問題に興味がありすぎて、『僕らのネクロマンシー』のラストシーンにもこの問題に関する口論を登場させました。
というわけでこの記事から引いてみたいのは以下の部分です。
消費するよりも創造する方が満足できる文化では、不要なコンテンツと、実際には既存のコンテンツに関する新しいコンテンツの両方が過剰に残っています.
では、これを肯定してみると?
太平記や宮本武蔵や忠臣蔵の話をさまざまな人々が繰り返し、しかしアレンジしながら語っていた時代だとか、遠野物語的な伝承の世界を思い浮かべると、そういうのもありなのではないかと思えてきます。消費文化のパラダイムからすると、あたらしいコンテンツや物語が次々と生産され、古いものはごく一部を除いて風化していったほうが望ましいわけですが、ポスト資本主義的な世界観からすると、ごくわずかなシェアードワールドにみなが創造主として参加することだって自然な気がします。TRPGをやっているから、余計にそういう実感があります。
LINE社をやめて5年が経つのですが、一時期私が作ったサービスであり、一時期私がブランドに関わった会社なので、気持ちはいまだにインサイダー。だから発言にはいまだに気を遣うのですが、こうやって公開情報があることでシンプルに語れることがあります。
ライブドアの売上は40億円、利益10億円。
はてなの売上は30億円、利益が3億円(2022年7月期)。
事業が売却されたという報道のみをもって、UGCというサービスや事業の限界を指摘するようなコメントをいくつか見かけたのですが、「はてな」やその他の優れたサービス同様、20年続く高収益事業を生み出すことに関われて誇りに思います。
私がこの記事をいいなと思うのは、代替性CAHOsさんのスタンスがWeb3リアリストだからです。懐疑的にときに露悪的に、正味のところを書いていて信頼できます。ざっくりしているのは口調だけで、環境理解はめちゃ正確。この文章のトンマナをよそ行きに着替えたら、どこにでも寄稿・講演できる内容です。でも、そんなことに時間使ってんじゃねーよ、ってことだと思うので、そのメッセージも含めて好感を持ちました。
6/「次の2年」、覚えておきますね。
Astar Networkの渡辺創太が日経新聞に「Japan as No.1 AGAIN」という全面広告を出した話からの、星さんとの会話。印象的だったところを抜き出しました。
起業家としての渡辺創太と思想家としての渡辺創太の間はギャップがあって、それにツッコミを入れたがっている人は結構な数いるのではないかと思っているのですが、起業家はビジネスで語ればよいのです。そう思っている自分にとって、星さんの言葉がとても優しくみえて、とても印象的でした。
7/「to Earn」の終焉。次はRMT型NFTゲームがブームか?
私はブームに乗るのが苦手で、だいたい同じようなところに居て順番がまわってくるのを待つようなところがあります。だから「GameFi」にも「X to Earn」にも興味を持たず、単純なNFTゲームばかりを追っていたんですが(その源泉は「Loot」)、この記事によればどうやら時代が巡ってきそうだ、ということのようです。
この記事のなかではRMT型とか、リビングアセットNFTとか呼ばれていますが、私はいまのところ単純に「NFTゲーム」と呼んでいます。定義は以下の図の通り。
なぜ私が最初から今までずっとNFTゲームだけをおもしろいと思えているかというと、それがTCG(トレーディングカードゲーム)にそっくりで、その理論と実践を相当程度当てはめて考えられるからです。
ここでいうTCGにはデジタルは含みません。テーブルトップの紙のTCGだけが、NFTゲームに似ています。その理由は、カード(トークン)の所有や資産性や流動性によるものです。このニュースレターではTCGのことをしょっちゅう話題にしていますが、その理論と実践はまだまだ過小評価されていると思います。もっと研究されていい。
後半のビットコインの説明がこの記事の本論なのだと思いますが、個人的には、前半部分にあるUltima Online、Diablo 2、Second Lifeの経済について説明した部分がおもしろくてメモしました。
9/ 博物館などで古文書食べる害虫「シミ」相次いで発見 外来種か
紙を食べる昆虫、「シミ」は、博物館などに保管されている古文書などを損傷させる害虫として知られています。
東京文化財研究所などのグループによりますとこの数年、国内の博物館などからこれまで知られていた種類とは異なる「シミ」が相次いで報告されたことから、DNA解析などを行ったところヨーロッパや中米などに生息する外来種とみられることが分かったということです。(中略)
東京文化財研究所保存科学研究センターの佐藤嘉則室長は「北海道から九州まで全国的に見つかっていてどんどん被害が出てくる可能性がある。紙の資料の保管法について改めて検討が必要だ」と話していました。
過去の貴重なデータを食い尽くす虫。SF的な創造力が湧いてしまってメモしました。こわいですね。
ちなみにこれがもし本当にSFだったら、虫たちは繭になり、繭からは糸が紡がれ、その糸は世界のどこかでまだ誰も聞いたことのないあたらしい言葉を織るのかもしれません。
あとがき
「もしそれが峠だったら」という文章を書きました。
知人に読んでもらったところ、「これ大輔さんしか書けない文章ですね」と言われたのですが、たしかに。これが大した文章かどうか自分ではわかりませんが、自分が書かなかったら存在しなかった変わった文章である点については同意するところです。もしよろしければご笑覧ください。
ガジェット通信のクドウさんによる「蒙古タンメンの辛さゼロの塩タンメンがうまい」という記事を読んで実際に食べに行きました。うまい。いま思えば、中本に行くときは無理して辛いのを食べてたんだなとわかりました。機会があれば、今後はずっとこっちのほうを選びます。