ニュースを読む余裕が出てきたので、ひさびさに週刊ペースです。
今週のナイン・ストーリーズ
2022年11月14日〜2022年11月21日
1/ 賠償金を払わない「論破王」ひろゆき氏の法の抜け道を使ったトンデモな理屈
乙武氏と西村氏のぶら下がりの取材は終わった後、私は諦めきれずに、主催者が呼んだタクシーに乗ろうとする西村氏を追いかけた。私にはまだ聞くことがあったのだ。それは西村氏が連邦議会に証言を求められている件だった。
あのQアノン信者が巻き起こしたアメリカ連邦議事堂襲撃事件について、真相を明らかにするために設置された公聴会が昨年、西村氏に対して4chanと連邦議事堂襲撃事件の関係について「証言」を求めていた。
これまでQアノンと連邦議事堂襲撃事件、そして西村氏の4chanの関係について、西村氏はいくつかの質問を公開の場でされてきたが、饒舌(じょうぜつ)ないつものトークとは打って変わり、ほぼ沈黙したままか、または話をそらし続けてきた。それはそうだろう。全米を揺るがすあの事件に、自分が経営する4chanが関わってきたなどということは、日本ではなるべく知られたくないはずだ。
タクシー前でその「証言」がどうなったのかを聞くと、西村氏は目をそらしたまま「連邦議会に聞けばいいじゃないですか」とつぶやくように言うと、車に乗り込み、目黒の並木道の向こうに消えていった。
Qアノンとひろゆきについて追い続けている清義明さんの最新記事。いまのところ新しい情報は少ないのですが、メディアが彼を無批判にもてはやす異常性に多くの人に気づいてほしいと思います。
2/ クリエイティブになるには、3種の読書を1000日続けよ
話題になってましたね。毎晩、物語をひとつ、詩をひとつ、論考をひとつ。これを千日続けることが、より創造的になるために必要なことだという話。
私はこれを結構ナチュラルにやっている自信があるのですが、その代わり、ニュースやドラマを観る習慣とはお別れしなければならないので、千日も経つとだいぶ浮世離れしてきます。それが本当にいいことかどうか、最近わからなくなってきました。
3/ 「マジック:ザ・ギャザリングのカードを刷りすぎて価値が暴落する」と巨大銀行がオモチャ会社に警告
印刷されたカードがユーザーにとって資産になるという特徴をもったトレーディングカードゲーム。そのエコシステムの一端がよくわかる記事なので紹介します。
簡単に言えば、あたらしいカードの価値が毀損するスピードが早まることで、ショップやコレクターがダメージを受け、中間事業者が撤退することによって新規ユーザの間口が狭まり、マジックのエコシステム全体が長期的に見てダメージを受ける、という指摘です。
これだけ読めばさもありなんという感じなのですが、一方で、再録禁止カードの約束を守りながら古いフォーマットに新規ユーザーを誘う試みはエコシステム全体にとって重要で、その成否が気になります。それこそが、いまのところマジックだけが直面している真にユニークな問題だからです。結果がわかるのに、まだ時間がかかります。
この事件についてひとつの記事だけを紹介するのは難しいのですが、「昔からやばいやつらだったよ」という話を紹介します。
ところで、とあるポッドキャストでFTXやSBFの話をとりあげて「やらかしちゃったよね」という言葉、そしてノリで説明されていたのですが、これは実際に、明確な意図をもった金融犯罪だったことがわかっていますから、「やらかしちゃた」のではなくて、「やりやがった」のです。認識が甘いのか、表現が吟味不足だったのかわかりませんが、いずれにしろ残念でした。
5/ ポッドキャストとニュースレター: 5 つの類似点と 1 つの大きな違い
どちらも愛好しているものとして、その分析を楽しく読みました。
その本文とはあまり関係がないのですが、最後の一文にインパクトがあったので紹介させてください。
Maybe just don’t use Revue as your newsletter platform.
Revueをニュースレターのプラットフォームとして使用しないでください。
私はGOTLのプロジェクトでRevueを採用し、つい最近それをSubstackに移行させたので実感を伴って「その通り!」」と叫ぶことができます。Revueはやめたほうがいい。
6/ 日本のNFT市場が活況を呈しているのはなぜか
実際そのようなんですよね。
なぜなのか。予想していたのとちょっと違う答えが書かれていて、「なるほど」と印象に残りました。スレッドの後半、このあたりです。
金融リテラシーの低さの結果として、多くの日本人はお金を投資のためではなく、消費のためのモノを買うための手段として考えていることが多い。金融リテラシーが高い人でも、暗号の税率が高い(住民税を含めて最大55%)ことも、投資に対する抑止力になっています。
前後のツイートもあわせてご覧ください。
あたらしいサービスは、元気の源。「こういう発想があったのか」といつも刺激をもらっています。
8/ 『22世紀の民主主義』/『なめらかな社会とその敵』の著者が語る24世紀の社会とは
Twitterスペースの録音なので、いずれ聞けなくなってしまうと思います。興味のある方はお早目に。
ちなみに、以下のあたりをおもしろく聞いていました(57分目あたりから)。
成田「今の世の中、実践がともなってなんぼというカルチャーがあり、やたら口だけのビジョナリーみたいなのが減っている。ただ、ルソーやマルクスなんてのは、ほんとにろくでもない、口だけで妄想や批判を書いていた人。今の感覚的に言えば、SNSでひたすら誹謗中傷している人に近い。自分では何も組織せず、行動を起こした人にぶちきれるみたいな。そういう謎の傍観者みたいな立場で、アジテートしたりビジョンだけ提示する人がいてもいいんじゃないか」
同時代にいるそうした人を思い浮かべて「そりゃ……しんどいな」と思いつつも、このふたりが楽しそうにしゃべっているのを聞いているうちに「それもありだな」と思ってしまいました。
9/ 自滅する「十月のカニエ」:ユダヤ系知識人はYeの反ユダヤ主義をどのように分析したか
記事の後半で目に止まったところを太字で強調して紹介します。
陰謀論を解体することの絶望的なまでの困難さを確認した上で、発端に戻りたい。「十月のカニエ」はいつも以上に被害者意識を募らせた結果、完全な反ユダヤ陰謀論者になってしまった。この有様を見て、どうしても連想せざるをえない人物、すでにローゼンバーグのみならず様々な論考がYeとの類似性を指摘している人物がいる。被害者意識に苛まれ、陰謀論を撒き散らし、陰謀論者に支持されてきたが、先日の中間選挙で遂に前途に暗雲が垂れ込め始めたドナルド・トランプだ。私たちはこの似た者集団にピーター・ティールを連ねてもいいし、イーロン・マスクを連ねることもできるだろう。彼らに共通するのは、桁違いの金持ちになってもなお、自らがこの世界の被害者であるという、もはやそれ自体陰謀論としか言いようのないフィクショナルな世界観を生き続け、民主主義的な社会を攻撃し続ける点にある。このようなタイプの男性が複数出現し、時代のインフルエンサーとして支持されるという現象を今私たちは目の当たりにしている。
これを見て思い出しました。2017年に書いた拙著『僕らのネクロマンシー』に、このような存在を揶揄のつもりでとりあげた箇所があります。
「じゃあ、現代の妖怪ってなんですか?」 僕は想像した。小麦色に焼けた健康的な身体に空っぽの脳みそを乗っけた存在が、何千万人という知性に同時に接続されて、その注目とリソースを独占して頂点に君臨している様を。そこに不安と恐怖はあるか。あるような気がする。ならばそれは妖怪ではないか。 それならあいつも妖怪だなとさまざまな固有名詞が飛び交い、それはやがてメンバーの結束を固めるきわどい冗談の応酬になった。そのあたりで本日はおひらき。僕らは明日の労働に備えて眠りにつくべく解散した。
当時は、この妖怪はトランプ氏のことを指しているつもりだったのですが、いまではすっかり妖怪の数が増えてしまい、誰のことを言っているのかわからない時代になってきました。
あとがき
最近、よくこれを聞いています。1980年に宅録されたプライベート・プレスの音源がリイシューされたもので、まさに発掘されたシティポップ。こんなものが眠っていたとは。