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「まだわからないよね」という構えを持ち続ける強さ 週刊メディアヌップ#4

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「まだわからないよね」という構えを持ち続ける強さ 週刊メディアヌップ#4

民俗学と、読書と、ウェブトゥーンと、NFTと、吟味思考。

sasakill.eth|佐々木大輔
Feb 15, 2022
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「まだわからないよね」という構えを持ち続ける強さ 週刊メディアヌップ#4

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ささきる(@sasakill)が気になったニュースにコメントを添えて、1週間分まとめてお送りします。気まぐれではじめたのが水曜日だったため、週の半ばが切れ目です。


今週のナイン・ストーリーズ

2022年2月9日〜2022年2月15日

1. 本日の朝日新聞「売れてる本」欄にて、岸政彦・編『東京の生活史』(筑摩書房)への書評を書きました。5刷1万7千部とはすごい。
本屋の店頭でものすごい存在感を放っている『東京の生活史』。なんと5刷1万7千部とのこと。人がこの巨大な本に惹きつけられる心理が知りたい。人口拡大時に東京に出てきた地方出身者同士が結婚し2世、3世が増えるにつれ、東京にふるさとを見出す人々の需要に応えられた、とかそういうことなんでしょうか。だとすると、松本隆の「風街」というコンセプトが実に普遍性のあるものだということに今さらのように気づき、驚く気持ちになります。公式サイト

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本日の朝日新聞「売れてる本」欄にて、岸政彦・編『東京の生活史』(筑摩書房)への書評を書きました。5刷1万7千部とはすごい。 ご存知かと思いますが、このような本⬇︎
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12:52 AM ∙ Feb 12, 2022
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2. 今では当たり前の「外食」や「ファミレス」は、昔はハレの日にしか行かない特別なイベントだった

元のtogetterには、これをもって「貧しかった頃」という感想も見受けられたんですが、私は違う感想を持ちました。貧しかったというよりも、家庭で食事する機会がいまほど市場化されてなかったということじゃないでしょうか。自分の体験を思い出すと、親戚や近隣の人々が手製の料理を持って集まる宴は、すごく豊かな時間でした。

3. 読書は、一行目を読むところからではなく、そのずっと前からはじまっている。

深く頷きました。私は電子書籍も紙の書籍も使い分けて両方便利に使いますが、紙の本が優れているなと思うのはまさにこの点です。一時は極端な電子書籍愛好家だったんですが、いまは転向していて、テクストとフィジカルがセットになった「本」に深くこだわるのこういう理由からです。

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内沼晋太郎 @numabooks
読書は、一行目を読むところからではなく、そのずっと前からはじまっている。 自分にとっては、読書から得られるものの1割くらいは、その本が気になった瞬間にある。手にとってパラパラめくったら2割、買って部屋に並べたら3割。 積読の肯定っていうのは、この3割の価値を重視することだと思う。
2:36 AM ∙ Feb 13, 2022
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4. 韓国が何故成功したかがわかる番組「ウェブトゥーン帝国の誕生(KBS)」の紹介
ウェブトゥーンは、もともとはユーザーが自主的に作り出すコンテンツからはじまり、やがてプラットフォームとなり文化となり大きなビジネスとなり、いまでは世界を席巻するに至ったという点で、UGCの最大の成功事例だと思っています。よく、ネット上のコンテンツはすべて一部のプラットフォームに牛耳られてしまったと言われますが、「すべて」ではありません。その有力な例外のひとつがウェブトゥーンです。このドキュメンタリー、いつか日本語で見られたりするんでしょうか。

5. いろんなところで叫ばれるNFTはクソだみたいな議論を見るたびに、ついに広く情報が届き、会話が始まったんだなと感動します。

ブロックチェーンの領域で、コンテンツやその作り手を支援するプロダクトやサービスづくりを何年も前から行ってきた高瀬さんのツイート。「ついに広く情報が届き、会話がはじまったんだな」という感動に想像を巡らせて、心のなかで10回くらい「いいね」しました。深く誠実にコミットしている人ならではの言葉です。

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Toshi | tsh.eth @toshiaki_takase
いろんなところで叫ばれるNFTはクソだみたいな議論を見るたびに、ついに広く情報が届き、会話が始まったんだなと感動します。あんな人も言及してくれてる!みたいな。 だからこそ、批評じゃなく実践で示し続けないといけないなと思います。やれることを着実に。
3:58 PM ∙ Feb 13, 2022
115Likes4Retweets

6. What Does Utility Mean in Our NFTs?
NFTを批判する言葉のひとつに「ただのJPEGじゃん」というのがありますが、そしてJPEGはJPEGでいいと思うのですが、それ以外に追加の価値があるとさらに良いわけで、その追加の価値のことを「Utility」と言ったりします。それにはどういうものがあるんだろう? ということを整理した記事。

  • Internal utility

  • Metaverse utility

  • Real-world utility

  • Community

以上のように分類されていて、理解しやすく再利用しやすいなと思いました。

7. ブライアン・イーノ「NFTのせいで、アーティストまで資本主義のチンケなクソ野郎になってしまう - COURRiER Japon
ふたつのことを思いました。新自由主義経済のもとで倫理観の低下を隠そうともしなくなった加速主義者の一味になりたいとは思わない自分からすると、チンケなクソ野郎といいたく気持ちもわかります。一方で、ほとんどのものにワクワクさせられないからポジティブになれないというクールな人よりも、わずかな本物を探したり作ったりすることにワクワクするホットな人でありたい。そんなことを考えながら「Re: Re: 空想のNFTと現実のNFT」という記事を書きました。

8. 「批判的思考」なんて勇ましいコト、私は言わない - 下村健一

吟味思考とは何かについて下村さんの説明。その図と、ネガティブ・ケイパビリティの説明が特に印象に残ったのでそれを引用します。

スクリーンショット 2022-02-13 12.37.31を拡大表示

この「スライド式スイッチを冷静に左右に動かす所作」こそが、クリティカルシンキングだ。そこには、結論を急がず「まだわからないよね」という構えを持ち続ける強さ(ネガティブ・ケイパビリティ)が求められる。

関連して、ある議論の途中でこんなことを言われたのを思い出しました。「理屈はいいから、良いなら良い、悪いなら悪いで説得してほしいのに」という言葉です。つまり私はスイスイスイッチを使って、結論を急がずに議論をしたかったのですが、相手はカチカチスイッチを教えてさっさとどちらかの結論を出してほしかったという場面です。なるほど、「まだわからないよね」という構えを持ち続けるには強さが必要だし、誰もが強くないのだから助け合いが必要です。

9. 「TECHCRUNCH JAPAN」および「エンガジェット日本版」終了のお知らせ
16〜17年もの長きに渡って活動してきた老舗媒体が、過去ログも残さないかたちで日本事業撤退のお知らせ。メディア運営の立場としては「これだけの知名度を持ちながら日本でのビジネスを肯定できるような状況ではなかったのか……」という残念さがありますし、いち読者の立場としてはずっとログを残し続けるImpressやWIRESに対する忠誠心がますますあがりました。人気急上昇中の「ウェブログ」とはという記事なんかは2000年2月25日ですよ。

あとがき

発熱して寝込んでいました。すわ、コロナかと覚悟したのですが、2回行った検査はどちらも陰性。ただの風邪……だったのか? でも、横になってる時間が長い分だけ、ふだんは聞かないポッドキャストまでゆっくり聞けたのは幸いでした。特に、マイゲームライフの「幼少期にファミコンに植えていた片桐仁、96時間ぶっ通しでFF4をやるゲーム廃人に」は再び体調が悪化しちゃんじゃないかってくらいおもしろかった。

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