暖かくなってきて、水槽のメダカやザリガニが活動をはじめました。
今週のナイン・ストーリーズ
2023年2月8日〜2023年2月21日
1/ ChatGPTに感情回路を埋め込んだら、やべぇ感じになった
先週のニュースレターで「このあとユーザーはAIに個性を求め始めて、やがて愛玩するようになる」と書いたのですが、それが実に簡単なことであることがわかるおもしろい内容。「Generative AIにそれをさせるのが簡単」という意味ではなく、「私たちは簡単に感情移入してしまう」という意味での「簡単」です。
ちなみに、同じニュースレター(#40)で「私たちが人間の知性だと思っていたものが逆に機械的反応に過ぎなかったことがよく知られるようになり、人間中心主義の最後の砦がぐらついてきます」とも書きましたが、成田悠輔さんの有名な発言、あれが「非人間中心主義」です。「非人間的」なのではなく、「非人間中心的」。自分も含め、人間という存在を中心に考えず、「自然」や「社会(第二の自然)」を中心に据える、というような考え方です。自然のためには人類は滅びたほうがいいとか、社会のためには老人は集団自決したほうがいい、とかそういう考え方。それに対して、「自分が老いたときにどうなるか想像力が働かないのか?」という批判がありますが、非人間中心的な考えでは自分のことを特別に考慮に入れないので、結論は変わらない、批判にあたらないということになります。
ちなみに、私自身はこの考え方に賛成していません。賛成していないのですが、Generative AIの広まりによって「知性や感情は、どうやらこれまで思っていたほど特別なものじゃないらしい」「人間は特別な存在じゃないらしい」という認識もまた広まると思うので、これまで以上に非人間中心的な考え方をする人が増えるだろうなという予測を持っています。
では、非人間中心主義の向こうにある人間中心主義とは何かというと、「ヒューマニティ」という言葉のイメージからはむしろ遠くにあるような「悪を為している」という自覚をもって生きることなのではないかと思うわけですが、話が長くなってきたのでこのあたりで。
2/ 文章次第でどんな行動も取れるTRPG AI
Generative AIとRPGの相性の良さに昨年来ずっと夢中なので、このような原始的なプロトタイプからさまざまな想像が膨らみます。めちゃくちゃ風呂敷を広げると、世界はそのように生成されているんだろうなという直感から、おもしろさを感じています。
3/ AI の時代を迎えるにあたって: 責任ある AI で未来の発展へ
マイクロソフトからの提言。太字は私。ここに書かれてある悪い予想は、過去実際に起こったことであり、ゆえに、これからも必ず起こるであろうことです。
AI が責任を持って倫理的に構築され、使用されるようにすることです。AI のような変革的なテクノロジには新たな規則が必要だということは、歴史が物語っています。責任ある企業が積極的に自主規制することで、その新たな法律への道を切り開くことにもつながりますが、すべての組織が自発的に責任ある慣行を採用するわけではないこともわかっています。(中略)
AI によって国際競争力と国家安全保障を確実に高めるようにすることです。認めたくない人もいるとは思いますが、この世の中は技術的優位性が国際競争力と国家安全保障の核となる断片化した世界であり、それを認めなくてはならないのです。(中略)
AI が狭い範囲にとどまらず、広く社会に役立つものにしなくてはならないということです。これまでの歴史から、重要な技術的進歩が人や組織の適応能力を越えてしまうこともあることがわかっています。
4/ 結局、AI創作とどう向き合うべき? 知られざる著作権の落とし穴と対策【弁護士解説】
フリーランス・副業のためのメディア「Workship」から、Generarive AIの利用についてクリエイターとして気をつけるべきことについての記事。
ちなみに、TRPGのリプレイを自動生成するようなサービスの場合はどうなるんだろう? その物語や場面が生まれるあたっては、明らかに人間による創造が行われているが、できあがったコンテンツは他とよく似たものだった、というような場合。関心があります。
昔、こんな小説を書きました。「今となっては、その価値を守る意味が失われてしまったものだけれども、自分にとっては変わらずに大事で、そのために今も戦い続けている」というような小説です。その「もの」というのは「ウェブ」のことで、小説のタイトルは『残念な聖戦』といいます。このインタビューを読んで、その“残念な聖戦”のことを思い出しました。
6/ 「会社=社会」という謎:民俗学者とともに考える「日本の会社」のわからなさ
どこかを切り取ろうにも切り取れない、隅から隅までおもしろい鼎談。本当に、どこも引けない。
訃報を遅れて知って、ショックを受けています。『近代の呪い』という新書から入って、その後、『逝きし世の面影』『幻影の明治』『黒船前夜 ~ロシア・アイヌ・日本の三国志』などに夢中になりました。ファンタジー批評の『夢ひらく彼方へ』も圧倒的でした。ご冥福をお祈りいたします。
8/ ヴァーチャル世界が拡大する時代に、共感覚的な体験は作れるか
冒頭で宮沢賢治の詩を引きながら、「エステティックスケープ」なる語が説明されます。
私はこのような感覚の風景的なるものを「エステティックスケープ」という造語で呼んでいる。ここでいう「エステティック/エステティクス」とは、日本語で一般的に訳される「美的」や「美学」という意味ではなく、その語源である古代ギリシャ語「アイステーシス」が意味する感覚的・感性的認識を指す。主に1980年代以降、感覚と風景については「サウンドスケープ」や「フードスケープ」という概念が研究者たちの間で用いられてきた。エステティックスケープは、これら聴覚や味覚も含め、複数の感覚体験(または共感覚的な体験)が作り出される場として空間を捉えるもので、五感を通して理解する「風景」ともいえる。つまり芸術や美、視覚的要素のみではなく、人々の五感を通した周辺環境の認識に関わるものである。よってエステティックスケープにおける都市空間とは、都市計画家やデザイナーらが設計・構築する物理的建築物のみならず、そこに生きる人々の風采やざわめきなど、私たちの五感を通した認識を構築する様々な要素を包含する。
Generarive AIが言葉から音や映像を紡ぐのを見るとき、音で色を感じるようなインプットの共感覚だけでなく、色が音になるようなアウトプットの共感覚もまた意外と近いところにあるんだろうなと思ったりするわけですが、そもそもでいえば、人は普段から「複数の感覚体験」や「五感を通して理解する風景」を視ているんだよなと思わされました。
9/ ドイツ発、クラフトビール×NFT【MetaBrewSociety】
クラフトビールとNFTをかけあわせたプロジェクト。年末にこのプロジェクトのCo-FounderのChantallさんに会って、それに勇気をもらってリンゴとシードルのプロジェクトをはじめたところもあります。遠野のプロジェクトはまだ小さいですが、継続して育てていきたいと思います。
あとがき
というわけで、今日から「無摘果リンゴからつくるシードル(ハードサイダー)プロジェクト」の参加券の一般販売を開始しました。
遠野の佐々木悦雄さんのリンゴ、遠野醸造と紫波のGreen Neighbors Hard Cider、そしてTONO DAOによる共同プロジェクトです。 ぜひ応援よろしくお願いします🍏
https://tsukuruuniv.stores.jp/items/63ead3377d65da7d8d31ed07