ささきる(@sasakill)が気になったニュースにコメントを添えて、1週間分まとめてお送りします。あたらしいプロフィールアイコンには、すっかり馴染みました。
今週のナイン・ストーリーズ
2022年3月16日〜2022年3月22日
1. Discord(ディスコード)の始め方──初心者のためのWIREDガイド
WIREDによる、Dicord初心者のための解説記事。Slackが企業の内外で交わされるビジネスメールを駆逐したように(👈 大袈裟な表現です)、Discordはプライベートのメッセンジャーの用途のうちいくつかを数年のうちに駆逐してしまうんじゃないかと私は思っているのですが、この記事はそうした本格的な普及前夜の雰囲気を表しています。
2021年に話題になったサービスといえばオトナは「Clubhouse」と答えるかもしれませんが、それよりも多くのダウンロード数をオーガニックで獲得しているのが「Discord」です(AppAnnie, Japan, 2021)。それは単にZ世代が好むツールの登場・交代だけを意味するのではなくて、ゲーム文化(Gaming)がゲームをしない人にも影響を及ぼしていくということを意味していて、コンテンツやメディアを考える人にとってはそれがとても重要なことだろうと思います。
なお、このゲーム文化については、「週刊メディアヌップ#3」と「Gaming is the next baseballとはどういう意味か?」でも書きました。ご興味あればあわせてご覧ください。
文字数やリンクに制限のあるTwitterやInstagramのBioを効率よく、そして美しく利用するためのプロフィールサービスは数多くありますが、なかでもLinktreeの調子がよいようです。
「現在、ユーザー数は2,400万人を超え、1日あたりの登録数は40,000近くに上ります」とZaccaria氏は述べている。ちょうど昨年、彼はTechCrunchにLinktreeには1200万人のグローバルユーザーがいると語った。これは、提供された数字によると、Linktreeのサイズが2021年3月以来2倍になったことを示している。
ちなみに私は、個人ではkoji(参照)を、メディアヌップではLinktree(参照)を使ってみています。近頃では、Web3のプロジェクトのホームページとしてLinktreeが使わられるケースも目にするようになりました。具体的にはPixel Heroes XのLinktreeがそれにあたります。詳しい情報はOpenSeaやYouTubeやHiDEやDiscordに譲ってリンク集に徹するという使い方。Notionをホームページに利用するよりもさらに楽な方法として、ありだと思います。
3. 未来学者エイミー・ウェブが語る「メタバースが本領発揮するのはアバターでもアニメでもない」
先週のニュースレターで紹介したFTIのファウンダーである未来学者のAmy Webb。新刊『The Genesis Machine』はバイオ領域の話ですが、それ以外の領域についても長期の未来予測の一端を披露しています。
──メタバースについて話しましょう。5Gがそうだったように、人によって、「メタバースはすべてを変える」、あるいは「まったく変えない」と意見が割れています。
メタバースによって起こると言われていることのほとんどは、曖昧で大げさです。メタバースの未来は、アバターではありません。あらゆる空間を3D化できるようになるということです。
もうひとつ。
──以前、スマホの衰退を予言されましたね。
はい。4年前、「スマホは2031年までにはなくなる」と言いましたが、いまもそう信じています。1つのデバイスでできることはこれから減っていきます。スマホのせいで、みんな眼精疲労を抱えているでしょう? これからは装着するような、より体に近いものに替わっていくのです。
2031年まであと9年。賭けるものを持っていないのですが、少なくとも自分は、そのときにはスマートフォンを所持してないだろうと思います。今ですら家に置きっぱなしで持ち歩かないことが多いので、たぶんきっとそうなってるはず。
その他のレポートはこちらから。
4.ドリコムがWeb3事業参入を表明。「Wizardly」ブロックチェーンゲームも
2001年に創業し、プロフィールやブログといったサービスで日本のWeb2.0企業の嚆矢となったドリコムのWeb3宣言。そして、同じ年にレンタルサーバ事業で創業したペパボも、同なタイミングで「なぜWeb3への取り組みを始めるのか」という文章を公開しました。
創業から20年も経っているので、「〜宣言」や「なぜ〜?」といった大見出しをつけなければいけない背景もわかりますが、私からすればこれらの企業がWeb3にフォーカスするのは当然。創業のマインドにさかのぼれば、Web3に熱中しないほうがおかしいからです。
ドリコムとペパボの活躍に、本気で期待しています。
とくに『Wizardly』。
ブロックチェーンゲームの特徴を生かすのにこれほど適したタイトルは他にないんじゃないかと思います。その思いが強すぎて、拙著『僕らのネクロマンシー』には『ウィザーディ』という名前のゲームを登場させてしまったほどです。
5. 高木浩光さんに訊く、個人データ保護の真髄 ——いま解き明かされる半世紀の経緯と混乱
「保護するのは情報ではなく人である」という冒頭のくだりに引き込まれて読み始めたのですが、読んでも読んでも終わらない。手を止めてカウントしたらなんと9万文字以上ありました。ほとんど新書です。
高木: この法律の目的は、情報を保護することではないのです。第1条の目的規定は、「個人の権利利益を保護する」と書かれていて、「個人情報を保護する」とは書かれていません。EU(欧州連合)のGDPR(一般データ保護規則)でも、第1条で「個人データの処理に係る自然人の保護」がうたわれており、個人データを保護するとは言っていない。保護する対象は「人」なのです。
日本語での研究がほとんど存在しない時代の資料を海外に求め、語源にさかのぼって説明してくれる綿密な序盤から、ウェブにあるまじき圧倒的な長さへ。おすすめしていいかわかりませんが、おすすめです。
6. 山古志村のNishikigoi NFTの第2弾セールが好評のうちに終了
山古志村の取り組みについては、以前「Re: Re: 空想のNFTと現実のNFT」という記事でもとりあげたことがありましたが、デジタル村民を募集する第2弾セールが3月21日まで行われていました(詳細はこちら)。その期間中、平井元デジタル相やJOI ITOさんらもデジタル村民として加わったことを明らかにしました。
さらにセール最終日には、中国語圏からのあたらしいメンバーも多く加わり、急遽、中国のチャンネルの準備が議論されたりもしました。
数あるNFTのプロジェクトのなかでも、ローカル領域と強く接続したNishiogi NFTの取り組みは(いまのところ)かなり珍しい部類に入ります。それゆえ、新しく加わる人にとっては新奇性があっておもしろい分、運営する側にとっては現実の地域および住民との接続に悩みが尽きないところだと思います。私も、Next Commonsを通じて「遠野」という地域で活動するにあたって、その手の悩みは尽きません。でもだからこそ、山古志村のプロジェクトから何かを学びたいと思ってジョインしています。
7.『水木しげる漫画大全集』制作秘話 ――監修・京極夏彦インタビュー
全114巻の水木しげる全集。京極夏彦さん自身も「あの点描」のレタッチをしながら原稿の完成度をあげて出版に至った企画だったとは! 水木しげるファンとしても京極夏彦ファンとして、隅々まで楽しめるインタビュー。「本」という物体への異常な愛情が、私の京極夏彦さんへの信頼の源になっております。
8. 基調講演 三浦佑之(千葉大学名誉教授)「神話と伝承から読み解く出雲世界」
大作『出雲神話論』(2019年)に続いて、ほとんど続編のような『「海の民」の日本神話 古代ヤポネシア表通りをゆく」(2021年)を出版されたばかりの三浦佑之先生が、島根県古代文化センターの基調講演およびパネルディスカッションに出演され、その動画が公開されています。
本でしか伝えられない、テキストの密度が可能にする情報量というものがあるわけですが、そのエッセンスを短い時間で伝えてくれる動画は本当に貴重。あの分厚い本はなかなか人に薦めづらかったのですが、これならば。
日本書紀と古事記の研究は、戦後、皇国史観を下支えするものとして時代に逆行するような学問だと受け取られやすく、科学の真っ直ぐな目で見ることが難しかった時期があったと聞きます。しかし、時間の経過と共にそうしたバイアスが薄れ、1984年に島根県の「荒神谷遺跡」で空前の規模の銅剣が発掘されるなどして、古事記の記述にある出雲神話がアカデミズムのなかで見直されていくことになります。
詳しくはぜひ動画で。
9. サザエさん、遠野にくる
サザエさん一家が、遠野にやってきました。
遠野は、私がまだ小さかった頃から、地元ではホップの栽培面積日本一として知られていましたが、全国的には無名でした。ホップが使われるのはビールで、ビールはキリンのものだったからです。でも、地域の醸造所が地ビールを作りはじめ、やがてクラフトビールに挑戦するベンチャーが生まれ、一年、また一年と、遠野のホップとビールが全国区の名産品・ブランドになっていきました。いや、「なっていった」という自然なものではありません。そのように努め、育てた人たちがいてこそ実現したものです。だから、ホップやビールに関わる人間にとって、先週のサザエさんは特別な回でした。
遠野は何十年も前からホップで有名だった。でも、それは今ほど当たり前だったわけではありません。だからこそ、今こうして当たり前のように紹介されることが嬉しいわけです。友人たちの投稿で賑わうタイムラインを見ながら、自分もそうした気持ちを味わいました。
もう一言。クラフトビールだけを作っているところは、いまやどこにでもあります。ホップだけを作っているところも、いくらもあります。でも、その両方を作っているところはとて珍しいです。さらに、ツーリズムやカルチャーまで作っているところとなると、「ほとんどない」から「唯一」の間くらいにあると言っていいと思います。
もっと詳しく知りたい方は、こちらのJapan Hop Countryのサイトや動画をご覧ください。
あとがき
ポッドキャストのシーズン1でTRPGをとりあげたのをきっかけに、四半世紀ぶりにゲームマスターに復活しました。タイトルは「ソード・ワールド」。懐かしい世界観とルール、そして新しいオンラインツールに触れて最高に興奮しています。特にTRPGセッションツールの「ココフォリア」。オフラインのテーブルトップもいいけれど、オンラインだからこそ気軽に画像やBGMが扱えて、TRPGのもうひとつの本領にふれた気がします。自分の中の何かが弾けました。詳しくはまた後ほど。