はじめに
MidjourneyやStable Diffusionといったお絵描きAIの登場でまっさきに思いついたのは、TRPGのシナリオを補強する背景イラストへの活用でした。CCFOLIAなどのオンラインセッションツールにそれらのイラストをアップロードすれば、物語の進行にあわせて没入感やドラマを演出できるというわけです。もともと、そのための素材集をBOOTHなどで購入していたくらいなので、お絵描きAIでそれが代用できるとなれば最高じゃないかと、そんな風に思ったわけなんですが、ねらった絵をつくるのはなかなか難しい。
そこで考案したのが、「RPGリプレイの作成にお絵描きAIを使おう」というアイデアです。こんな利点があります。
ゲームマスターひとりではなく、プレーヤーと一緒にチームでわいわいやりながらお絵描きAIが楽しめる。複数人でやるから、コツも盗みやすい
未知のシーンではなく、チームが体験したシーンの再現を試みるので、使うキーワードやねらうイメージがわかりやすい
過去の冒険にはあてはまらなかったけど、よかったイラストについては、次回以降のセッションで再利用でき、シナリオ作成のよいネタになる
などなど。すごく理にかなってますよね。端的に言ってめちゃくちゃおもしろかったです。
今回リプレイにしたのは、TONUP TRPG。それはなに? という方はこちらから。
以下にその成果の一部をご紹介します。自分たちがだけが経験している冒険の、しかも抜粋なのでなんの話かまったくわからないとは思いますが、雰囲気だけは伝わると思います。そして、それさえ伝われば十分です。どうぞご笑覧ください。
TONUP TRPGリプレイ
美しき高地の氷河湖
崩壊と大洪水を引き起こす以前、トオヌップの氷河湖はファーランドでもっとも風光明媚な場所のひとつだった。大陸中央部の高峰パハヤチニカからの雪解け水を数千年にわたって湛えた巨きな湖は、人間の政治や妖魔の侵略を寄せ付けない高地にあり、それゆえ聖地として長く保存されていた。
〈第0夜「世界と趣向」より〉
復興ギルドでの出会い
ギルドが探索のために人手を集めているというので、冒険者の屯所に赴く。しかい、集まった冒険者たちにはどうも気骨が感じられない。部屋の隅でリュートを鳴らし集合の合図に応じようとしないハーフエルフ(楽器の腕はなかなかのものだ)、齢弱冠十八の若エルフ(彼ら長寿種にとっては生まれたての赤ん坊に等しい)、学者風のマーファ様の信者(この者もエルフ! なぜこれほどまでエルフが多いのか?)。中でも自分のことをエルフと勘違いしているグラスランナーは、自分はシティーボーイであるから探索になぞ行きたくないと言う始末で私はほとほと呆れたのだが、戦士たるは抑強扶弱を旨とすべしと、一行の護衛役を引き受けることにした。私は武者。斧が振れればそれでよい!
〈第1夜「東の島国の戦士の血を引くドワーフ、ローバー・デヤンデーの日記」より〉
アンウィズの出張所への侵入
アンウィズについたが、一見するところ“うさぴょん”はいない。しかし僕のエルフとしての魔法的第六感がアンウィズのバックヤードに何かがあると囁いている。案の定、アッセンはバックヤードの見学を断ってきた。前からアッセンは怪しいと思っていたんだ。僕たちは口裏を合わせ、ローバとカルパス、エレアノールに気を引いてもらっている間に、トトと二人でアンウィズの裏口へ向かった。あわよくば一匹や二匹くらい、ファミリアをパクろうという都会派ハングリー精神も持ち合わせながら。
〈第2夜「自らをエルフと勘違いしているグラスランナー、ビップ・エレキ・バンの日記」より〉
母コカトリスの復讐
目を見るだけで石化してしまうメデューサのような存在は知っていましたけれど、もしかしてこの怪物もその手の石化を可能にしてしまう怪物だったりします...!?わたしが怪物にびびっていたら男性陣がボコボコ殴り始めたので、なんか加勢してしまいましたわ。そうしたらあっけなく倒せたので意外と大したことなかったのね...と思ったのも束の間、奥から巨大な怪物が飛び出して来ましたわ!!! この怪物は確実にやばいですわ!!!
〈第2夜「幻のリュートを探すハーフエルフ、エレアノールの日記」より〉
助け出されたうさぴょん
僕の魔法的第六感がこれでもかというぐらい叫んでいる。箱を開けろ、そして唱えろと。 僕は指輪を手に取るや否や装着し「ファミリアーッ!!」と詠唱した。
僕のもとへモキュモキュとうさぴんが現れた。まだ魔法的第六感の囁きは止まらない。「僕たちのことを助けてくれ!」と伝えると、うさぴんはトトをペロペロ舐めあげ、トトの石化が治った。
〈第2夜「自らをエルフと勘違いしているグラスランナー、ビップ・エレキ・バンの日記」より〉
トトの野郎が石化しているではないか。どうしたら助けられるんだろうか。絶望的な気持ちで下を向いて俯いていると、ビップが大きな声で何か叫んだぞ! なんと、建物の奥からうさぴんが出てきたではないか! ぼくの呼びかけには一度も振り向いてくれなかったのに、なんでビップだけ……! この気持ちは嫉妬なのだろうかとぼーっと考えていると、気がついたらコカトリスは倒れているし、トトの石化も治っているではないか。何が起きたのかはわからないが、きっとうさぴょんが不思議な力を発揮してくれたのだろう。
〈第3夜「18歳の幼きエルフ、カルパスの日記」より〉
魔獣使いファナ博士の隠遁先
3人で檻の掃除をしていると、割烹着を着たカスパルがひょっこり姿を現した。
「 朝餉か、早いな」
「違うよ、博士が呼んでるんだよ」
ファナ博士はパーティーを一瞥すると、これから語るは大義とばかりエヘンと一つ咳払いをした。
「アンウィズが来る」
因縁の名に一同が色めいた。〈第3夜「東の島国の戦士の血を引くドワーフ、ローバー・デヤンデーの日記」より〉
陥穽に落ちる山人
マーフィストに会ったのは初めてだった。やっぱり僕には理解ができない。何かを生み出すこの腕は手段であって目的ではない。到達すべき真理や変えるべき社会があるなら、どんな手段でも検討には足るはずだ。
だからこそ、そんなマーフィストを動かし、巨人を取引に引きずり込んだ対話の力には驚かざるを得ない。
見上げるような巨人の自由を完全に奪うほどの穴を彼らが作ったのは、想像できなかった。エレアノールとローバーの演説は、後で聞いたところによれば、とても僕にはできない、人の心を動かすという芸当だ。もしかしたらアカデミーやアンウィズを変えられるのはそういう力なのかも知れない。
〈第3夜「ファラリシストのエルフ、トトの日記」より〉
山人を乗せて去る白鹿
交渉は成った。山人は舟の在処を知る知人を連れてくる。一同は方舟の噂に頼み、山人とともにファミリアを捕まえ金をつくる。そうすれば、山人は冬を越せる金を手に入れ、村人たちは平穏な暮らしを取り戻し、一同は大金持ちになり、ついでにアンウィズへの意趣返しもばっちり。大きな賭けだが価値はある。
「それでは再びここでまみえよう」
山人がぴゅうと口笛を吹くと、どこからともなく神々しい純白の鹿が現れた。ひらりとそれに跨ると、山人は瞬く間に森の奥へと姿を消した。
〈第3夜「「東の島国の戦士の血を引くドワーフ、ローバー・デヤンデーの日記」より〉
都に脱出するアンウィズの幹部
街を抜け馬車は北東へと進む。次第に人家はまばらとなり、草木は高さを増し、舗装された道は山道へと姿を変えた。「仕掛けるならそろそろだぞ」「ですがやつら、相当な手練れですよ」馬車を繰るのはあわせて4人。その中には見慣れた顔も含まれていた。
「あれはアッセンか」〈第4夜「「東の島国の戦士の血を引くドワーフ、ローバー・デヤンデーの日記」より〉
次回予告?
トトとカルパス。ふたりのエルフが怪しく光る雲を見上げている。
山人からの使者を名乗る怪物がチャ・ザの教会を訪ねてきた。
都に住むアンウィズの創設者。その元にも、ファーサリアムの暴落の報が伝えられた。
さいごに
ちなみに、一回のセッションが終わるたびに、ゲームマスターはあらすじを、プレーヤーは自分目線のナラティブをNotionに書き込んで記録しているため、このようなリプレイ作成が簡単にできました。おすすめです。