3週間ぶりの配信です。その間に何をやっていたかというと……ポッドキャストを8本、日乗を8本。具体的には、「燕三条NFT 匠の守護者」が販売開始になったり、「無摘果リンゴでつくるハードサイダー」プロジェクトにおける枝打ちなどがありました。公私混働と諸志貫徹で楽しくやっています。
今週のナイン・ストーリーズ
2023年5月3日〜2023年5月22日
1/「AIのゴッドファーザー」がAI研究を後悔しGoogleを退社
https://gigazine.net/news/20230502-hinton-godfather-of-ai-google-quits/
ヒントン氏は以前、危険な技術になぜ取り組めるのかと聞かれた時、原子爆弾の開発を主導したロバート・オッペンハイマーの言葉を引用して、「魅力的な技術があったら、思い切ってやってしまえ」と答えていましたが、もうそんな言葉を口にしようとは思わないと話しました。
マーク・アンドリーセンが2011年に「Software is eating the world」と言ったときにはまだ、「自分たちも飲み込まれる側である」という認識はなかったように思います。むしろ「自分達が世界を飲み込んでいるのだ」という優越感さえ漂うような言葉です。それから12年。その言葉が真であり、しかも例外や安全地帯がないことにリアリティが出てきました。
2/ イーサリアムを「公共財」と捉え、守るために
https://www.coindeskjapan.com/176050/
イーサリアムブロックチェーンは2つのグループにわかれている。一方は「Regen(リジェン)」と呼ばれ、グローバルな公共インフラを作り出し、維持するための革新的なスマートコントラクトの驚異的なエコシステムの源と見られている。
もう一方は、革新的でパーミッションレスなDeFiやNFTを推進し、ときにラグプルなどの詐欺を招く「Degen(ディジェン)」。ハイリスク・ハイリターンを好むディジェンは我々のエコシステムの中で重要な役割を果たし得るが、我々はこれら2つのグループが協力し合える方法を定義する必要がある。両者は対立する必要はない。だが協調が必要だ。
おそらく両者を連携させる、より優れたフレームはリジェン、ディジェンのそれぞれが「宣教師」「(カネ目当ての)傭兵」と呼ばれる違いにあるだろう。ディジェンを自認する人の多くも心の奥深くではイーサリアムの精神を大切に思っているはずだ。
「宣教師」は、我々がそうであるように「テクノロジーに魅せられている」。一方で「傭兵」は、自分たちの意思でイーサリアムブロックチェーンをよりオープンで、透明性の高いものにしようとするだろう。
メディアヌップでたびたび話題にする「暗号精神」と「暗号文化」の話に通じる衝突の話(週刊メディアヌップ#14)。記録としてとりあげました。
3/ 画像生成AIの「悪用」に絵師たちが反発、pixiv上でイラスト非公開に…福井健策弁護士に聞く - 弁護士ドットコムニュース
https://b.hatena.ne.jp/entry/s/www.bengo4.com/c_23/n_15982/
議論のなかで、法律と感情のすれ違いとして印象に残ったのは以下のようなコメント。
全くずれてる。これは学習そのものへの反発で現状の規制がどうなっているかとは関係ない。開発自体がフリーライダーとして認識されてる。
この後、pixivが生成AI作品を締め出す声明を出したり(参照)、DLsiteなどがそれに続いたのはよく知られている通りです。生成AI作品そのものは、引き続きchichi-puiやPatreonやDiscordなどの暗黒森林に投稿されており、いわば「絵画を展示する美術館」と「ピンナップが多数掲載されている大衆雑誌」に棲み分けされたような状態です。
生成AIによる画像について、絵心のない私はそれを普段からプロトタイピングツールとして便利に使っているのですが、ふと「Game of the Lotus 遠野幻蓮譚」の三人のキャラクターを作らせてみたことがあります。するとこの場合においては、私は創作者のひとりとして三人がどのような振る舞いをするか深く理解しているので、生成AIが生み出したあらゆる画像を焼き殺したいような衝動に駆られました。似て非なるものが大量に生み出されるのをおぞましいと感じたわけです。
というわけで冒頭のコメントに戻ります。法律と感情のすれ違いが、自分にもよくわかるようになりました。
4/ LangChainによる二人プレイTRPGリプレイを日本語でやってみる
https://note.com/shi3zblog/n/n3902d143ec68
この手の話題は必ずとりあげるようにしています。
おそらく、TRPGというゲームが世の中に広く理解されていないので、生成AIとの相性の良さや、それがゲームやメタバースやシンセティックメディアのなかに流通していったらどれだけのインパクトがあるかがまだうまく伝わっていないのだと思います。
5/ 生成AI、このままではWeb3にネガティブな影響
https://www.coindeskjapan.com/181233/
実は、論旨はあまりピンときていません。「ネガティブな影響」という言葉が示しているものが、世の中のアテンションや、投資といった短期的なものに向けられているためです。ただ、起業家・投資家として悲観的になったり、このような記事を書いて自らを鼓舞したりといった気持ちは理解できるので、記録として取り上げました。
6/ 自分の周りの5人を平均すると自分になる Ep.77
https://twitter.com/sasakill/status/1658114284612644865
最近のお気に入り。新潟市の仲良し三人組が送る音楽系ポッドキャスト。ビジネスパーソンが大好きな「自分を変えるにはつきあう人を変えよ」的な自己啓発メッセージを心の底から軽蔑して嗤ってるところが聞きどころです。私が大好きな小盆地宇宙がここにあります。
7/ 食べログのテックブログにChatGPTプラグイン開発の舞台裏の様子を掲載しました
https://tech-blog.tabelog.com/entry/first-challenge-tabelog-chatgpt-plugin-devleopment
古き良きオールドスクールな開発ブログとして、素晴らしい内容だと感心しました。特に、近代的なアプリケーションとして「法務調整」「セキュリティ調整」などがしっかりカバーされているのがよい。その昔の開発ブログは、そのあたりがだいぶルーズでした。
8/ 橋本 大也 氏: ChatGPTと本の未来
橋本大也さんが、日本電子出版協会向けに行なったセミナー。特に、著者・翻訳者・編集者としてのChatGPTの便利な使い方が実演されていて、BrowsingやPluginsをどんな風に活用したらいいかがわかりやすかったです。具体的には「Likewise」というサービスを知らなかったので、参考になりました(Likewise launches ChatGPT plugin to use AI to recommend TV shows, movies, books and more)。なお、講演資料はこちら。
9/ 細野晴臣を褒めたりない
https://www.1101.com/hometarinai/2023-05-12.html
私も常々そう思っています。なので、今度ポッドキャストで特集をやります。
あとがき
最近『ハーメルンの笛吹き男』(阿部謹也, 1988)と『中世への旅 騎士と城』を読んだので、頭の中がヨーロッパでいっぱいです。いまは畑中さんの新刊『今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる』を読んでいます。民俗学、飽きません。