息子と一緒に近所の大きな公園に行ってラジオ体操に参加してきました。たぶん、100人近くいたんじゃないでしょうか。その後、デニーズに行ってパンケーキを食べて帰ってきました。夏休みですね。
今週のナイン・ストーリーズ
2022年7月20日〜2022年7月26日
1/ 「この原稿は違法です」中国のワープロソフト、未公開小説をロック
SFの世界にでもありそうなおそろしい話で、これをもって中国政府に悪感情を抱くことは容易いでしょう。でも同時に、SF作家・藤井太洋さんから聞いたこんな話を思い出しました。
2019年に成都で開催された「第五回中国国際SF大会」には、リベラルのなかでも特にプログレッシブと呼ばれるような刺激的な人々が集められた(アイリーン・ガン等)。
そうした超リベラルな人々を中国は国費で招待した。当然ながら彼女らは香港やウイグルの問題についてあれこれ言ったが、中国は何も文句を言わなかった。
翻って日本はどうかと考えると、当時話題になっていたのは「あいちトリエンナーレ」。騒動のあと、文化庁が「金を返せ」と言ったことに対して、SF大会に参加していた中国人も驚きを隠せなかったようです。他国のことを嗤ってちゃいられないと思わされるエピソードでした。
2/ 10代若者はTikTokとインスタグラムでニュースを得ている=英監視機関
見出しが示す事実に驚きはありませんが、この記事がメディア関係者への励ましで結ばれていることには興味が湧きました。
インスタグラムやTikTokはニュースを消費する媒体として人気だが、そこで扱われる話題の多くは、いわゆる伝統的な新聞社から発信されるものだ。
そして、つい忘れられがちだが、ティーンエージャーにとって最大のニュース源はインスタグラムではなく、家族なのだ(65%がこう答えている)。そして、10代の若者の両親はおそらくまだ、ニュース取得をインスタグラムに頼り切ってはいないはずだ。
このような分析で注目を浴びやすいのは、TikTokやInstagramといった情報取得のツールの変化であり、情報源であるメディアの話だと思います。つまりこの記事が言っているのは、「情報取得のツールのトレンドは急激に移り変わっているが、情報源のトレンドはそれよりまだゆるやかである」ということだと思います。
しかし、私がより大事だと思うのは、情報取得のモチベーションであり、なにをニュースと捉えるかという認識のほうです。毎年楽しみにしているロイターのDigital News Reportの2022年版の48ページには、こんな記述があります。
若者にとってのニュースとは?
政治やコロナウイルスのようなトピックにニュースルームの関心が向きすぎているというこうした認識は、若い視聴者が多様なニュースの議題、声、視点をより強く求めていることも反映している。本報告書で述べたように、若者(特に18-24歳)は、ニュースのあり方に対して異なる考え方を持っている。彼らは、メディア組織は気候変動などの問題に対して立場をとるべきだと考え、ジャーナリストはソーシャルメディア上で自由に個人的見解を表明すべきだと考える傾向が年長のグループより強いのです。
さらに、去年の2021年版のほうには、「SNSを利用するときにもっとも注目するのは誰か?」という調査が出ています。
TikTokでは36%の人が、Instagramでは34%の人がセレブリティだと回答しています。それは、メインストリームとオルタナティブのニュースソースの合計よりも多くなっていることが以下のグラフから読み取れます。
このふたつを考え合わせると、「若者は、ニュースに対する立場や意見は明確であるべきと考え、現にそのように行動している有名人を報道機関よりも注目している」ということになります。あえて名前はあげませんが、YouTube等で活躍しているあの人やあの人やあの人のことです。伝統的な報道機関はそうした人物を軽視したり無視しますが、そしてそれはそれでひとつの見識だとも思うのですが、若者の本当の動機に目を向けてみるとどいういうアイデアが出てくるでしょうか。TikTokやInstagramといったプラットフォームに原因を求めるのではなく、両親世代はまだ新聞を読んでいるさと慰めるのでもなくです。と、勝手なことを思いました。
3/ JASRACが個人クリエーター向け情報管理システム 新理事長に聞く
なるほど、どんな仕組みだろうかと見物しに行ったのですが、序盤でずっこけそうになりました。太字は私によるものです。
楽曲を登録すると「存在証明」を取得できます。音楽ファイルのハッシュ値、タイムスタンプ、ユーザー情報などがブロックチェーンに登録され、いつ、どのユーザーによって登録された作品なのかをJASRACが保証できます。
ブロックチェーンじゃなくてもいい代表的な事例のように思えます。
ちなみに、JASRACの貢献や理念は否定するものではなく、たとえばこのインタビュー中にも「我々の目的はクリエーターの支援です。権利者の支援ではなく、創作する人の支援です」という美しい言葉が出てきます。クリエイターエコノミーの時代に歓迎されるべき思想のように思えます。
しかし、長い間に渡って権利ビジネスに胡座をかいていたからなのか、根本的な部分での思い違いが顔を覗かせます。
著作権について正しく知ってもらえれば、音楽家として活動していくためには、どこかの団体のメンバーになる方がいいという結論に必ず行き着くと思います。そのときにJASRACのメンバーになることを選択してくれればうれしいですけれど、そうでなくてもいいんです。例えば、世界に羽ばたこうと米国の団体に入る人もいるでしょう。しかし、どこにも所属しないで音楽家としてやっていくのはかなり難しいということを、早いうちに感じ取ってほしい。
ここで「大きなお世話だ」と思うのがクリエイターの心理なんですけどね。
4/ 私にはこんな風に見えるWeb3相関図
よくできた図なので紹介したいと思います。
一点コメントしたいところがあるとすると右上。「Web2.0」ではなく「Web2」とするのが正しいです。「Web2」なる新語は、「Web2.0」の悪い部分だけをまとめてパッケージにするときに使われる言葉ですから、やり玉にあげられるのであればそれは「Web2」ということになります。
また、ここにVitalikの存在やSoulbound Tokenのアイデアに刺激を受けている人々も書き加えたい気がするのですが、その説明については次のニュースにゆずります。
5/ いくつもの「Web3言説」
ITジャーナリストの星さんによる、いくつも平行して存在するWeb3の言説についてのわかりやすい分類。
最近はそこに、Vitalikの「Soulbound Token」のアイデアに影響を受けた人たちによる(2)でも(3)でもない第5の言説も増えてきたように思います。というわけで、それぞれの原典あるいは代表例となる文章を、個人的な整理の意味でもリストアップしてみたいと思います。
ĐApps: What Web 3.0 Looks Like (Gavin Wood, 2014)
Why Web3 Matters (Chris Dixon, 2021)
Web3と国家戦略~基礎編~ / 実践編 (増島雅和, 2022)
WEB5: AN EXTRA DECENTRALIZED WEB PLATFORM (Block, 2022)
Decentralized Society: Finding Web3's Soul (E. Glen Weyl, Puja Ohlhaver, Vitalik Buterin, 2022) + Soulbound Token (Vitalik, 2022)
春秋戦国時代か、黄巾の乱の前後の三国志を思い出します。曹操もいれば袁紹もいる。孫堅もいれば、袁術もいる。劉備もいれば、劉表もいる。そんな感じです。
6/ Webの歴史とはどんなものだったのか 並行世界Web1~Web3ではない、現実世界のWeb以前~Web創世記を語ってみた
Web3が話題になったことで、まるで玉突き事故のように、インターネットとWorld Wide Webの黎明期に関するすぐれた証言が出てくるのは実にありがたいことです。
ちなみに、Web3に対する距離の取り方も、識者のお手本のように思えました。Web2もWeb1もあとから作られた並行世界のナラティブなのだから、「そこにあんまり目くじらを立てても仕方ない」という姿勢は、実にその通りだと思います。
7/ 高齢だから「老害」なのではない
今週だからこそ(?)なぜか心に響くように思える一節。肝に銘じたいと思います。
8/ じっちゃまの転向
「インフルエンサー未満こそ、これからの時代のスイートスポット」という一言からはじまる連投。大きく頷きましたので、引用します。
広瀬さんはそれを「Web3」の本質ゆえと説明していますが、その背景となっているのは、現在の世界からのエクソダスなのではないかと思います。自分はそうです。ポッドキャストもニュースレターもDiscordも、自分にとっては国外脱出を試みるための小さな舟です。
9/ 再録禁止リストについて知る必要があるが、聞くのが怖かったことのすべて、あるいは、再録禁止リストについてあなたが間違っている理由
Magic the Gathering(MTG)という30年続くトレーディングカードゲームが、「人工的な希少性」の導入によっていかに生き延びたかというエピソード。ユーザーとマーケットがどう反応したかの貴重な証言になっています。
人工的な希少性の導入はNFTでよく批判の的になりますが、それについては過去に「空想のNFTと現実のNFT」という記事を書きました。
デジタル世界に人工的な希少性を導入するNFTのアイデアと実装は、無償なものをわざわざ有償にするのではなくて、見えない化されたコストを再び見える化するものとして捉えられることを指摘した。そして、MTGというゲームを例にとって、レアリティがあることでむしろ初心者への間口が広がる例があることを紹介した。また、オーナーシップが生じる仕組みの上では、人はそれをコストではなく資産と捉え、資産を有効に使うためにコミュニティやマーケットに積極的に働きかけるようになる。そうした人々があつまることによってさらに価値が安定、あるいは上昇する。
MTGには学ぶべきポイントがたくさんあると思っていますので、今後もこういう例があれば紹介したいと思います。
あとがき
ほっとテックの#027にゲスト出演しました。普段からDiscordでやりとりしている相手だったので、自分の番組のようにリラックスして話せました。その雰囲気が、番組の中にも出ていると思います。
具体的には、インターネットやWorld Wide Webに目覚めたきっかけの話で、私は「月刊PCエンジン」で、Youheiさんは「MSXマガジン」でそれらに出会いました。懐かしい。