今年のあたま、「空想のNFTと現実のNFT」というタイトルの記事をいくつか書いた。何を書いたのか今となってはあまり思いだせないが、最後に書いた部分だけはよく覚えている。
ちなみに、それなら自分もやってみようと思っていくつかのNFTの企画を準備しているところである。そのうち少なくともひとつは実現できると思う。ただのJPEGであれば今日にも発行できるのだが、一応、自分がやるものはそれ以上の工夫があるもの(NFTの言い方でいうとUtilityがあるもの)にしたいと思っているので、そこに時間をかけている。(中略)
自分の関心はいまのところ、メディアとかコンテンツとかコミュニティとかローカルといった、ごく一部にだけ向けられている。
「とりあえずつくろう」「自分がやれることをやろう」「できればよいものを」。そんな風に思ったのだった。
そのあとの9ヶ月で、3つのNFTプロジェクトを作った。そのバリエーションをまとめると次のようになる。
メディアとコミュニティのMembership NFTをPolygonで
貸し借りできるBook NFTをEthereumで
体験型のGamified NFTをふるさと納税で
以下に詳しいデータをリストアップする。
1/ To, Nup & Familiars(TNF)
ジャンル: Membership NFT
ブロックチェーン: Polygon
販売: OpenSea等
アート&コンテンツ: 使い魔の版画(制作: CHACO)
ユーティリティ:
メディアヌップのDiscordサーバにおいて、「裏メディアヌップ」というロールを付与され、そのロールの所有者でなければアクセスできないプライベートチャンネルに参加できます。
こちらのページにメールアドレスを入力いただけると、次回から、特別会員向けの「一降霊術師の日乗」というニュースレターが届きます。
その他、メディアヌップの先行アナウンス、先行予約、限定コンテンツへのアクセスなど。
2/ A Wizard of Tono
ジャンル: Book NFT
ブロックチェーン: Ethereum
販売: OpenSea等
アート&コンテンツ: 『僕らのネクロマンシー』
著者: 佐々木大輔
ブックデザイン: 藤田裕美
写真: エレナ・トゥタッチコワ
編集: 内沼晋太郎、松井祐輔(NUMABOOKS)
開発: akasata.eth
ユーティリティ:
電子書籍をEPUB、mobiあるいはPDFの形式でダウンロードできます。
NFTを貸し出すことができます。
メディアヌップのDiscordサーバにおいて、「A Wizard of Tono Holder」というロールが付与され、先行アナウンス、先行予約、限定コンテンツへのアクセスなど、著者からの特典を受けられます。
遠野にある宿泊施設「Uレジデンス」を会員特別価格で利用し続けることができます。
3/ Game of the Lotus 遠野幻蓮譚
URL: https://gotl.io/
ジャンル: Gamified NFT
ブロックチェーン: Polygon
販売: ふるさと納税サイト
アート&コンテンツ: GAME OF THE LOTUS PROJECT
ユーティリティ:
キャラクターNFTとアイテムNFTのふたつを使って、独自のトークンにカスタマイズすることができます
NFTの入手を通じて、遠野の地理・文化・歴史・民俗・生活を知ることができます
NFTの所有を通じて、TONO DAOの日頃の活動に参加していくことができます
お知らせ: もしそれが峠だったら
これらのNFTに対して、いろんな感想をいただくことができたが、そのなかからひとつ、最新の「Game of the Lotus 遠野幻蓮譚」に寄せられたものを紹介したい。
かつて住んでいた遠野市で、NFTを使った興味深い試みが行われていることを知り、応援の意味もこめて寄付してみた。
中には可愛らしいキャラクターとアイテムが入っており、背景や着せ替えが可能となっている。遠野市の提携店や公共施設などに行き、QRコードを読み込むことで「チェックイン」することができ、ランダムでアイテムがもらえるしくみになっているとのことで、好奇心も手伝い、久しぶりに遠野に行ってみた。
伝承園でチェックイン。そのままひっつみを食べながら手に入れたアイテムを確認すると、アプリの中の女の子はクラフトビールを楽しんでいる様子で、車で来たのにとれたてホップのビールを飲んでしまいたい気持ちが頭をもたげてきた。風の丘でも同様にアイスを食べながらアイテムを確認すると、遠野物語のテキストとともにカッパが目に飛び込んできた。即採用。お着替え。これは楽しい。
かつて住み、何度も行ったことがある場所で、「チェックイン」を通してデジタルの遠野市はどんどん広がり、自分が体験したことがない現代の遠野の景色の中で、ビールを飲んだりジンギスカンを食べたり、遠野物語に思いを馳せたりしているキャラクターたち。
デジタルとアナログ、過去と現代、それぞれの遠野をつなげる画期的なまちづくりの試みとしてよくできているなあ、遠野市、すごいものを作ったなと感心しきり。しかも出オチではなく、ここから物語が展開していくという。これからが楽しみである。
とりあえず今回は家族で車で来たが、次は一人で、今の遠野の町の中をぶらつき、ビールを飲みたいなと考えながら、NFTのキャラクターの足取りを追体験しようと思ってるなんて、これが正真正銘の「体験型NFT」だなと思い至り、遠野市の先進的な試みにもう一度感服した。
実にありがたい感想です。なぜありがたいかといえば、これが、無価値であるとかクソであるといわれがちな「空想のNFTと現実のNFT」の現在地を示してくれているからである。
悪くはないでしょう?